棗坂(なつめざか)猫物語

猫目線の長編小説

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

6章

6章「こんばんは。どう?ケイトちゃん。あなた、初日からすっかり馴染んでるわね」丁度、最後のお客と入れ替わりに店に入って来たサクラは、昨日と同じように私の喉を気持ち良く撫でながら辺りを見回して「それに、何だか他の猫達も急に雰囲気変わったわね」と…

5章

5章 猫カフェ マリエへの出勤初日、私の入れられたキャリーケースは、たちまち5匹の猫達に取り囲まれた。皆は、口々に言いたいことを言う。(働くって、どういう意味?私達、ここに居るのはここが私達の家だからよ。そりゃ、人間達は飲み物や食べ物を売って働…

4章

4章 ショウ君の話によると、私達の住んでいる所は坂の多い町で、車一台がやっと通れるくらいの入り組んだ路地が、あちこちに張り巡らされているらしいの。私の家とショウ君の家の間にある道は通称「棗坂」。古くからの呼び名で、最寄りの駅にもその名前が付…

3章

3章 「なるほど、そういうことだったのね 」 カオルの家のリビングで、私は香水臭い女の膝の上に載せられて、背中を撫でられている。ここに来てから人の会話をよく聞くようになって、私はかなり沢山人間の言葉を覚えたわ。前いた家のおばあさんは一人暮らし…